美しき月を背に
その日帰ってすぐに爺やに聞いてみたけど、
『いつかお嬢様にもわかる日が来ます。気長にお待ちください。時間はまだまだたっぷりありますから』
と、こう返されてしまった。
同じ学校の人達に聞いてみたいが、あいにく私には友人らしい友人がいない。
親しくもない私が急に、『恋って何?愛って何?』などと言い出したら、当然変わり者扱いされるだろう。
まあ、既に変わり者扱いされてるけど。
友人がいないのだ、昔から。
魔界にいる頃から外に出歩くことをほぼ禁じられていた。
当然外との交わりなんてない。
おまけにきょうだいもいなかったから、いつも1人。
遊ぶという事もなく、ひたすら勉学に徹していた。
勉強したからといって、何になりたいとかあったわけではない。
ただ暇だったから。
趣味は?
と聞かれると、読書、音楽。
それぐらいしかない。