天翔ける君
死にたがりの少女
学校からバスを二本も乗り継いで、さらに自転車で10分。
そうすると自宅が見えてくるから、そこからまた10分。
目的地まで、およそ2時間。
バス停や信号で止まるたびにイライラして、恵都(けいと)は無性に泣きたい気持ちになった。
必要な物はスクールバッグの底板の下に隠してある。
だからもう、あそこに行けば終わる。
全部、終わる。
早く、早く。
恵都はスクールバッグを力いっぱい抱きしめて、やたら遅く感じるバスの中でただ耐えた。
終点で降りると、バス停のすぐそばにある駐輪場へ走った。
駐輪場といってもアスファルトに自転車のマークが描かれていて、簡単な柵があるだけの田舎ならではのものだ。
他にとめてある自転車は2台きりで、焦る恵都にはありがたかった。
鍵を手早く外すと、とにかく自転車を漕いだ。
普段はしない立ち漕ぎも、今日ばかりは解禁だ。
だって、今日で全部終わるんだから。
恵都は逸る気持ちのままに自転車を漕ぎ続けた。
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