天翔ける君
となると、狙いは千鬼だ。
恵都に特別なところがあるとすれば、千鬼と共にあることだ。
根拠はないが、十中八九そうだろう。
もちろんそれは、千鬼が生きているという前提で、だが。
夜鬼は千鬼が恵都を助けにくると考えているのだろう。
実際、生きているのならば、千鬼は助けにきてくれる。
きっと、とか、おそらく、だとかは付かない。
絶対、だ。
千鬼は絶対助けにきてくれる。
恵都は千鬼の姿を思い浮かべた。
それだけでふわふわと温かな気持ちになる。
恵都はそのふわふわとした気持ちの正体に気づいた。
こんな状況になって、初めて分かった。
千鬼の笑顔を見て、近くにいるだけで、幸せな気持ちになっていたのだ。
――ああ、どうしてよりによってこんな状況の時に。
好き。
千鬼が、好き。