天翔ける君
千鬼は過去に囚われ復讐することではなく、これからを生きていくことをおしえてくれた。
新しい世界で生きていくという選択肢をくれた。
なにも知らない妖だけの世界で、けれど恵都はこの世界で千鬼といたいのだ。
ふん、と夜鬼は不満げな息を漏らして、それでも元の場所に座った。
恵都が肩を撫で下ろすのさえつまらなそうに眺めている。
「なぁ、いったいどうしたらオレの女になるんだ」
大きなため息を吐き、あぐらをかいて肘をつく夜鬼と目が合った。
「そもそも、私は千鬼のなんでもないよ。万が一、私があなたを好きになったとしても、千鬼は傷ついたりしないよ」
「あれはな――」
珍しく考え込むように、夜鬼は言葉をきった。
「あれは自らの近くに弱いものは置かん。オレがいつ仕掛けてくるか分からんからな」
意味が分かるか?と夜鬼は恵都をのぞき込む。
「つまり、それでもお前を側に置きたいと思ったのだろう」