天翔ける君




「……違うよ。千鬼は優しいから、私を放っておけなかっただけだよ」

「いいや、違うな。お前がどう思っていようが、お前はあれにとって特別なのだ」

夜鬼は特に表情も変えずに言いきった。

もしもそうだとしたら、恵都にとってそれほど嬉しいことはない。

一緒にいられるだけで幸せだ。
しかし、なれるものならば、千鬼の特別になりたいのだ。

恵都は自分が欲張りになっていくのを感じながら、それでもそう思うのを止められなかった。





再び座敷牢に閉じ込められると、恵都は大きなため息を吐いた。
閉じ込められているのに、この解放感はいったいなんだろう。

――そうだ、誰にも見られていないからだ。

夜鬼といると、必ず誰かが側に控えている。
恵都を見張るためではなく、夜鬼の側仕えなのだが、それでも常に誰かが近くにいるというのは気疲れするものだ。

そもそも、夜鬼といるのが苦痛だ。
威圧感があるし、時折見せるあの冷酷な瞳は恵都を心底おびえさせる。





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