天翔ける君





「ちょっと!やめて!今までこんなことしなかったじゃん!」

恵都はもがき、なんとか夜鬼の下から這い出そうとする。
しかし男の、それも鬼の力には到底勝てそうもない。

今まで力ずくでされることはなかったのに、と恵都は油断していた自分を呪った。
夜鬼は無理矢理この屋敷に連れてきたが、それから恵都に無理強いすることはなかった。

「オレの女になれ」とは言うものの、直接的なことはしなかった。
そこだけは信用していた恵都だったが、考えが甘かったのだ。
用心していれば、もっと抵抗のしようもあったかもしれないのに。

「やめて!やめてよ!」

「わざわざ人間を抱くほど女に困ってはおらんが、女としては妖も人間も違いはない。手籠めにするなど男として情けないことだが、お前が弱っていくのだからやむを得ん」

夜鬼の瞳が静かに青を灯した。

――ああ、本気だ。
夜鬼の瞳はその色と同じようにひどく冷めきっている。

だからといって、恵都に諦めがつくわけではない。




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