天翔ける君



それ、というのが何を示すのか分からず、首を傾げる。
特別なものは何も持っていない。

「それだ、それ。お前の持っているものだ」

「……これ?」

内心首を傾げながらペットボトルをかざすと、千鬼は大仰に頷いた。

だがすぐに合点がいった。
この和風の屋敷や千鬼の着ているものを見た感じ、恵都は時代劇みたいだと思った。
もしかしたら文明も江戸時代か、もしくは戦国時代あたりなのかもしれない。

「ミルクティーだよ」

「なんだそれは」

「えーっと、紅茶っていう緑茶の親戚みたいなものに牛乳を入れたもので、砂糖を入れて甘くしてあるの」

「……気味の悪い飲み物だな」

おいしいのに、と思って恵都はもう一口ミルクティーを飲んだ。
改めて聞かれると、説明に困る。

「その入れ物はなんという?」

「ペットボトルっていって……」

恵都のたどたどしい説明に焦れたのか、

「ちょっとこっちへ来てよく見せてみろ」

千鬼はわざと遠くに座った恵都を布団の上に連れ戻そうと抱きかかえた。



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