天翔ける君






ひとりで買い出しに行けたらいいのだが、それは危険だと恵都は十分承知している。
疲れているだろう柊に美味しいものを食べてもらいたいが、そのために柊に買い出しに行ってもらうのは気が引ける。

それに千鬼の容体が急変したらと思うと、柊には屋敷にいてほしい。

「恵都さんの料理はとても美味しいのだと千鬼に聞きました。……実は食べられる日を楽しみにしていたのです」

柊は少し恥ずかしそうに下を向き、照れ隠しか後ろ頭をかいた。



――どうしよう。
そんな期待に応えられるほど料理の腕に自信はないのに、と思いながら、台所に立った恵都は米をとぎ始めた。

千鬼が美味しいと思ってくれていたのが嬉しかった。
母も山吹も、千鬼だって美味しいと言ってくれていたけれど、気をつかって言ってくれているのではないかと少し不安だったのだ。

本当に美味しいと思ってくれていたのが嬉しくて、千鬼が食事をできるようになったらの献立を考えながら恵都はかまどに火を入れた。

恵都はつやつやに炊き上がったご飯を軽く塩水に浸した手に取った。
握りすぎないよう力加減に注意しながら、手際よく握っていく。





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