天翔ける君





柊がどれくらい食べるか分からない恵都は多めにおにぎりを握った。
いつ帰ってくるかもしれない山吹や嵐の分も念のため作ってある。

山吹と嵐の分は清潔な布を被せて食卓の上に置いた。
朝までに帰らなければ、自分が食べれば無駄はないだろうと恵都は考えた。

柊の分は熱いお茶と一緒におぼんに乗せ、千鬼の部屋へ運ぶ。

柊は何度も美味しいと褒めながら、おにぎりを食べてくれた。
誰が握ったおにぎりでも大差ないように思うが、恵都は素直に嬉しく思った。

恵都が千鬼の看病をかってでると、柊は意外にもすんなりと任せてくれた。
おにぎりのお礼にお風呂の準備をしてくれるのだそうだ。

柊が優しい人で良かったと、恵都は心から思った。

山吹はどこかへ行ってしまったし、嵐は怒らせてしまった。
柊が優しく接してくれなければ、きっと心細かっただろう。



恵都は千鬼の側に座り、苦しそうな顔を覗き込んだ。
熱はまだ引かず、まだ一度も目を覚ましていないらしい。

「千鬼」

恵都は小さな声で呼びかけてみたが、やはり返事はなかった。





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