天翔ける君
暴れそうになるのをぐっと堪えて、恵都は身を硬くしながらも大人しく千鬼に抱えられる。
スクールバッグと一緒に布団の上に降ろされて、恵都はめくれたスカートをさっと直した。
千鬼は食いものだというが、それでも恵都は女だ。
捕食者とはいえ、男に触られるのに抵抗がある。
「ペットボトルとは、いったいどういうものだ?」
ペットボトルを手に取り、千鬼はそれをしげしげと見つめる。
少し考えてから、恵都は口を開いた。
「ペットボトルは飲み物を入れる容器で、コンビニとか自販機に売ってるの」
「そのコンビニだとか、自販機だとかいうのはどういうものだ?」
すぐに質問が返ってきて、恵都はまた考える。
「コンビニっていうのは24時間やってるお店で、でも24時間じゃないところもあるんだけど……」
24時間営業でないコンビニがあるのを知ったのは、恵都もつい最近のことだった。
えーっと、えーっと、と恵都が考えをまとめようとしていると、千鬼が顔を近づけて覗き込んできた。