天翔ける君


恵都は取り戻したい。
しかし夜鬼の望み通り、山吹たちを手にかけることもできない。

それだったら、千鬼の選ぶ答えは決まっている。
他の策を考えている余裕はなかった。

恵都の着物は乱れていた。
なにをされたのか想像するだけではらわたが煮えくり返る。

やつれていて、顔色も悪かった。
見たところ怪我はしていなかったが、酷い扱いを受けていたのは間違いない。

ーーオレが恵都を巻き込んだ。
なにが守る自信がある、だ。
とんだ思い上がりだ。

あんなにか弱い恵都を心身ともに危険にさらした。

もしかしたらーー。
恵都は穢されてしまったかもしれない。

そう考えると、息が苦しくなる。

なんの非もない恵都。
過去を乗り越えようと必死に、懸命に健気に、生きたいと言った恵都。

よく泣いて、それよりも笑う恵都。

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