天翔ける君


守りたいと思っていた。
けれど、守れなかった。

屋敷に張った結界の中に匿ってさえおけば、安全だと思っていた。
愛刀の特殊な力を利用した、特に鬼に有効な術を施していたのだ。

しかし夜鬼は侵入を果たしてみせた。
どんな手を使ったのか分からないが、もうこの屋敷が安全でないのは確かだ。

夜鬼のことだ。
いつまた、どんな手段を使ってくるか見当もつかない。

だから、恵都を置いておくわけにはーー。

「千鬼!」

襖を勢いよく開け放ち、恵都がなだれ込むようにして部屋に入ってきた。

「--意識が、戻ったのですね」

続いて入ってきた柊が崩れ落ちるようにして膝をつく。

よかった、よかった、と涙声を出した。

「柊さんにちゃんと診てもらおうね」

恵都は小さな子供にするように、千鬼の手を包み込むようにして握った。


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