天翔ける君
「良かった。千鬼が死んじゃったらどうしようかとーー」
最後の方は嗚咽にまぎれ、ほとんど聞き取れなかった。
胸が痛んだ。
恵都が己の判断のせいで泣いているのかと思うと、罪悪感でいっぱいになる。
守ってやりたいのに、笑顔でいてほしいのに、すべてが裏目に出ているようにさえ思える。
いったいどうしたら、恵都は笑っていてくれるのだろうか
「お体の具合はどうですか?」
冷静さを取り戻した柊が恵都の隣に座り、手のひらで熱を測る。
「もう大丈夫だ。世話をかけたな」
「熱はまだあるようですね」
けれど柊は安堵したように表情を崩し、千鬼は自分がどれだけ危ない状態だったのかを改めて知った。
「お水飲める?それとも、なにか食べられる?」
恵都はきゅっと千鬼の手を握りしめたまま、鼻をすすりながら首を傾げた。