天翔ける君
まだなにか食べられる気はしないが、喉は乾いている。
恵都の言葉に甘えることにした。
「では水を」
「分かった!すぐに持ってくるね!」
嬉しそうに笑って、恵都が立ち上がる。
慌ただしく部屋を出ていく恵都に、熱が残った手がさみしく感じる
「あなたが目を覚ますまで、恵都さんはほとんど付きっきりだったのですよ」
穏やかな笑みを浮かべた柊は、額を冷やすための手拭いを桶の水に浸して絞り、再び千鬼の額にのせる。
「あなたのおっしゃっていた通りの、とても可愛らしい方ですね」
「--可愛らしい、などという言い方はしていないだろう」
「そうでしたね。命に代えても助けたい方、でしたね」
ふふ、と柊は楽しそうに声を漏らす。
なにがおかしいのか、と千鬼は押し黙るものの、悪い気はしなかった。
柊が恵都を仲間として受け入れてくれているのが分かったから。