天翔ける君
恵都は千鬼が起きてからも付きっきりだった。
ずっと千鬼の手を握り、そして時折額の手拭いを冷やしてくれる。
「恵都、少し休んできたらどうだ」
千鬼がそう言ったのは、目覚めてから3日目のことだった。
恵都は千鬼が寝てから自室に戻り、千鬼が起きる前に家事をこなしている。
倒れてしまわないか心配で仕方がない。
「私が熱を出すとね、お母さんがずっと一緒にいてくれたの。安心できたし、いつも忙しくしてるお母さんがいてくれて嬉しかった」
さみしげに笑った恵都の手を握り返してやると、少し照れたような笑みに変わる。
「だから、千鬼が迷惑じゃなければ、私にもそうさせて?」
今度は不安そうに首を傾げる恵都に、千鬼の胸は甘く締め付けられる。
「……迷惑ではない」
素っ気く返したものの、本当は抱きしめてしまいたかった。