天翔ける君
恵都の顔は一気に赤くなった。
涼しい顔のまま言うものだから、恵都には冗談なのか本気なのかも判別ができない。
自分はただの食べ物だ食べ物だと自分自身に言い聞かせてみても、恵都の頬は熱くなる一方だ。
「も、もういいよ、ちゃんと自分で選ぶから!」
どうにもならなくて千鬼に背を向けると、向かいの棚に置かれた反物に目が吸い寄せられた。
白地に真っ赤な大ぶりの牡丹が鮮やかな可愛らしい反物。
その牡丹の色が変化した時の千鬼の瞳にそっくりで、恵都は心奪われた。
「それがいいのか」
「……うん。この色、千鬼の瞳の色にそっくりできれいでしょ?」
同意を求めて振り返ると、千鬼にじっと見つめられた。
「あれ?あんまり似てない?」
「……いや、自分ではよく分からないが、恵都は変わった女だ」
頭を撫でられて、恵都は首を傾げた。
千鬼にしては珍しく歯切れが悪い。
花に喩えられて気を悪くしたのかと思ったが、そういうわけではなさそうだ。