天翔ける君
少女と鬼
仕立てを頼んでいた着物が届いた。
千鬼に渡された、たとう紙の包みを丁寧に開くと、あの牡丹の着物が入っていた。
それに合わせて千鬼と山吹に選んでもらった鮮やかな緑をした帯も一緒だ。
「千鬼ありがとう!家事頑張るね!」
「着物の代金くらい気にする必要はない。それも全部恵都のものだ」
他にいくつかあるたとう紙の包みを顎で差し、千鬼は恵都の頭を撫でた。
最近、千鬼はよく恵都の頭を撫でる。
心臓には悪いが、なにか意味があっての行為でないのを恵都は分かっている。
「これ、全部?」
「そうだ」
合計5つもある包みに恵都はたじろいだ。
中学生の時に母に買ってもらった、3点セットで1万円みたいな浴衣とはわけが違う。
中学生の恵都にはそれでも十分高価に思えたのに、あの呉服店は雰囲気からして高級そうだった。
着物のことをよく知らない恵都だって、この着物が高級なのは分かる。