天翔ける君



鬼の姿は何度か恵都に見られている。
特に人間からしたら恐ろしい姿のはずなのに、それでも恵都は平気で寄ってくる。

山吹に懐くのは分かるが、食うと言っていた千鬼にも平気で近寄る。
恵都は無防備で危うい。

この妖の跋扈する世界ではひとりでは到底生きていけないだろう。
屋敷を出た途端、妖に食われてもおかしくない。


食うつもりがないのなら、人間の世界へ帰すべきだ。
恵都の住む国は治安がいいようだし、こちらにいるよりははるかに安全だ。
そんなことは十分承知している。

だが、帰りたくないと言ったのは恵都で、千鬼もこちらにいればいいと思った。

鬼は妖の中でも非常に強い部類に入る。
その鬼の頂点に君臨するのが千鬼だ。
恵都には詳しく話すつもりはないが、千鬼は最上位の妖だった。

恵都を守る自信はある。
この町なら千鬼に逆らうものはいないし、一緒にいればまず危険はない。

この町の外には千鬼をよく思わない妖もたくさんいるが、それでも恵都を守りきる自信はある。


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