天翔ける君



「ねぇ山吹さん」

「んー?」

隣で料理をする山吹に声をかけると、間延びした返事が返ってきた。

「千鬼っていつ結婚するの?この前言ってたでしょ?」

「あー、それは千鬼が決めることだからなぁ」

山吹はなんとものんきで、恵都が悩んでいることには気づいてくれないらしい。
でも恵都が話せば、きちんと話を聞いてくれる。

「千鬼が結婚するのって、めでたいことだよね?」

でもね、と恵都は続ける。

「さみしくなるなぁって思っちゃって」

「え?なんで?千鬼がここからいなくなるわけじゃないんだから」

手を止めて、恵都を安心させようと山吹が笑いかけてくれる。

「やっぱりお嫁さんがこの屋敷に来るってことだよね?そうしたら私は出ていかないと」

「なんでそんな風に考えるんだよ。千鬼はそんなつもりないと思うけど」

山吹は怪訝な顔をして、なかなか恵都の言わんとしていることをくみ取ってはくれない。



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