天翔ける君




「文にはなんて書いてあるんだ?」

「柊と嵐は捕まったようだ。夜鬼(やき)からの文だ」

ざぁざぁと遠慮なく降る雨にかき消されてしまいそうな声で千鬼が答えた。

「オレに話があるらしい。ひとりで来いと書かれている。――山吹、恵都、支度を手伝ってくれ」

早口に告げながら、千鬼は私室に向かう。
その横顔には焦りが見えた。


柊と嵐という名前には聞き覚えがある。

この屋敷に山吹以外にふたりいるという住み込みの名前だ。
確か町の外に用事があって、しばらく帰ってこないと聞いている。

いつだったか山吹が話してくれたのを思い出す。

柊は素直な奴、嵐は気難しい奴。
そんな風に言って、山吹は笑った。
きっとすぐに仲良くなれるよ、と。


そのふたりが捕まった。

千鬼は確かにそう言ったが、恵都には理解できなかった。
千鬼と山吹の仲間なら、きっとなにか悪いことをしたというわけではないだろう。



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