この声が君に届くなら・・・
「君は昨日サッカーやってた…?」



(こっちを見てた茶髪の男子だ)



驚いた顔のまま呆然と私の顔を見つめていた彼は、声をかけるとハッと我に返ったようにいきなり話し出した



「あ、昨日は見ててゴメン!たしか同じクラスの子だなぁって見てただけなんだ!決して他意があったわけじゃ…」



「おーい輝(ひかる)なに1人で騒いでんだ!うるせーぞ!」



前の方から他の男子の笑い声が響く



「うるせーのはお前だろーが!」



輝と呼ばれた男子は返事をするとまた私のほうを見る



「ゴメンな、アイツうるさくて」



「そんなことないよ。楽しそうでいいじゃん」




「そっか、ありがと」



そう言ってニカっと口を開けて笑う彼の笑顔はなぜか心が落ち着いた



「それで、私になにか用?」



「え?用って?」



「用があったから話しかけたんじゃないの?」



「隣の席になった人に挨拶しようと思っただけだよ。迷惑だった?」



苦笑いされて急いで首を横に振る




「ううん、そうじゃないの。フレンドリーでちょっと驚いただけ」



笑顔で弁解する




「そっか…あっ!てか俺の名前わかる?」




「………」




(ヤバイ…下の名前しかわからない)



名前を言えばいいんだろうけど、なにせほぼ初対面


いきなり名前で呼ばれるのは馴れ馴れしすぎじゃない?



だからって同じクラスなのにこんなしっかり喋ったのは初めてで苗字なんてわからないし…




「まさかとは思ってたけど、俺のこと知らな…」



「輝!」



「…え?」




「輝くんでしょ?名前は知ってるよ」



名前もさっき知ったばっかなんだけどね…



「知ってくれてたんだ!」



一気に笑顔になった



(…犬みたい)



「じゃ、改めて自己紹介!幸田(こうだ)輝です、よろしく!」



「翼志(よくし)未来です。よろしく」




このときからきっと私は君に惹かれてたんだ…





『翼志って珍しい苗字だな』


『よく言われる』




< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop