恋するキオク
圭吾の顔を見て、安心したかった。
そしてなにやってんだって、笑って欲しかった。
でも、そこに現れたのは
「こんなとこで何してるんだ」
担任…。
屋上に上がるとこ、見られたかな。
なんだか、今さら恐怖感もない。
都合のいい言い訳を見つけることもできない私は、そのまま黙って下を向いた。
余計なことを言って、いろいろ聞かれるのもイヤだったし
今ここに圭吾が来てしまうと困るから、適当に流してこの場を終わらせないと…
「今授業中だろ。ったく、米倉の悪い影響か?」
「…っ」
目を細めて睨むように見る担任に、なんとなく反抗心が沸く。
もう圭吾を悪いと決めつけられるのは気にいらなかった。
でも
「米倉くんは関係ないと思います」
「いや、オレには大ありなんだよ。クラス受け持っただけでも胃が痛い思いしてるってのに、周りの生徒にまで悪影響出されてさ。さぼり大流行ってな」
「悪影響って…だから、私が勝手にさぼってるだけじゃないですか!それに…米倉くんには」
圭吾には、悪いとこなんてない。
そう言いたかったけど、学校にもまともに出て来ないことは見たままで。
他校の人との悪い噂があることも、事実を知らない私には完全に否定することはできなかった。
そしてその理由も、聞いたことなんてないし。
私が何も言えなくなってると、担任は面倒くさそうに顔をしかめて頭をかいた。
「家庭環境が複雑だといろいろあるって言っても、言い訳に過ぎんからな。だから何だって話だ。三年の米倉とも本当の兄弟じゃないって噂を信じれば、あの差も納得するよ」
「えっ…、本当の…」
その時、一限目を終えるチャイムが校舎内に響いて。
私の言葉を無視したのか聞こえなかったのか、担任は次の授業にはちゃんと出ろと言うことだけを残して屋上を出て行った。
噂…
省吾と圭吾が本当の兄弟じゃない?
でも、目とかそっくりだもん。
そんなわけないよ。
私の中で、
また複雑な感情が溢れた。