恋するキオク



ずっと空いていた一番後ろの席には、ちょっと着崩してるけどちゃんと制服を着てる圭吾が座っていた。

さっきの私みたいに、窓から見える空を眺めていて。

騒ぎ立てる周りの様子なんて、全然気にしてない。



「ほらー、さっさと席に着けぇ〜……えっ!?」



みんなをかき分けて教室に入って来た先生が一番驚いてる。

それはそうだよね。

もう新学期が始まって一ヶ月が過ぎてるもん。





「オレ実物見たの初めてかも」

「私もぉ……なんか大丈夫なの?」

「一年の時何度か見かけたな」

「あぁ〜、なんかやらかして授業とか潰してくんないかなぁ」



ホームルームが始まっても、みんなはヒソヒソと圭吾に対する陰口を続けてた。

私も気になって、ちらちらと後ろを振り返ってたんだけど……



私のこと覚えてるかな。
なんて、密かに期待。



前にあの店で見た時とそんなに変わってなくて、髪の色はそのままだしピアスだって付いてた。

私は思わず、その指先に目をやった。



あの指で弾いてたんだなぁ…



何の曲だったのかわからないけどすごく静かな曲。

こんなこというのもおかしいけど、圭吾の見た目とはほど遠い雰囲気の曲だった。



また、聞けたりするのかな。



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