恋するキオク



授業が始まっても、圭吾は変わらず窓の外を見てるだけだった。

先生も見て見ぬ振りをするみたいに、何か言うわけでもなく圭吾の方へは顔も向けなくて。

みんなもコソコソ振り返ったりして陰口は言うのに、関わろうって感じはどこにもない。



私にはそんな様子が、なんとなく切なかった。





「先生たちは知ってるんだろうけど、みんなはまさか米倉圭吾くんが省吾先輩の弟で、しかも理事長先生の孫だなんてことは知らないんだろうね。この学校に米倉って名字は何人かいるから。
それに私も陽奈から聞くまでは知らなかったし。っていうか知ってめちゃくちゃ驚いたし」



昼休みに私の教室まで遊びに来た春乃が、苺のパックジュースを飲みながら高伸びで圭吾の席を覗き込む。

圭吾はお昼前からどこかに消えていた。



「でも誰も圭吾くんに話しかけないし、先生たちも無視っていうか……気にかけないっていうか。それがなんとなく可哀想にも見えるんだよね」


「陽奈ぁ〜。あんたは彼氏の弟だからってそんなに危機感持ってないかもしれないけど、そんな命知らずなこと誰もするわけないでしょ。話しかけていきなり殴られたらどうすんのよ」


「え、殴ると思う?」


「いや…う〜ん……それは言葉の例えでまさか殴らないとは思うけど。でも睨まれることはありそうでしょ」


「まぁ……」



外見で判断するわけじゃないけど、たしかにあんな格好だとそう思われても仕方ない気はしてた。

でも……本当にそんな人なのかな。



「私話しかけてみようかな。次の生活科の時間なら席も自由だし、せっかくだから圭吾くんもクラスの出し物に興味持ってくれた方が、みんなと仲良くできるかもしれないし…」


「ちょっと、陽奈っ!」


「ん?何?」



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