恋するキオク
二度目の出逢い
―――陽奈side―――
逢いたい
逢いたい…
でも……誰に?
それもわからないのに、私はいつも何かを追いかけてた。
ずっと埋まらない胸の奥。
なにを想って切なくなるのか、時々泣きたくなる理由にも戸惑う。
でもそれを、省吾に知られてはいけないような気がして
「具合どう?」
「うん、大丈夫。新学期からは学校へも通っていいって」
私はまた、作るような笑顔で省吾に寄り添っていた。
退院の前日。
昼下がりの病室には、また新しく見る顔が現れた。
彼女は…
「クラス委員の牧野です」
新学期が始まっても、私が普通に学校生活を送れるようにって、いろんな準備をしてくれてるらしい。
記憶が曖昧なことも理解してくれた上で、クラスの様子を話してくれた。
「野崎さんが休み始めたのは夏休みのほんの少し前だし、…って言っても何も覚えてないんだろうからどうしようもないけど、そんなに困ることはないと思うんだ」
「うん、どうもありがとう」
「それと…」
隣にいる省吾を気にしながら、少し遠慮気味な態度を見せる牧野さん。
私はその声を拾うように、体を傾けて牧野さんに近づいた。
「なんていうか…、あまり無理しないでね。あ、記憶のこと。私は別に思い出せなくてもいいんじゃないかと思うんだよね。忘れたことには…それなりの意味があると思うし」
「…?」
「ほら、思い出して幸せになることと、そうじゃないことってあると思うから。…今が幸せなら、それで良くない?」
牧野さんにとっては、思い出してもらいたくないこともあるみたい…
私にはそう思えた。
そして省吾も、私に今のままでいてもらいたいと思ってることを、私は前から感じてたんだ。
だから
「私もそう思ってるよ。以前のことなんてもう気にしない。思い出そうなんて考えてないから」
優しくて、どこか弱い部分をもった省吾が、このままの私が隣にいることで安心してくれるなら
それがきっと、
一番いい方法なんだって。