恋するキオク
簡単に言う善矢に、少しばかり苛立った。
バカみたいに正面から突っ込んでいいのとはわけが違う。
中にあるものを傷つけるわけにはいかない。壊すわけにはいかない。
そんな柔らかい壁で包まれたものを目の前に、動けなくなることだってあるんだ。
「はぁーっ!?それ本当にあの子と省吾さんの…」
「あいつが言ったんだよ。……野崎がそう言ったんだから、間違いないんだよ…」
「……んな、冗談だろ」
別に隠す気もないし、だからって相談してるわけでもない。
野崎からあった電話の内容を話すと、善矢は口を開けたまま固まった。
静かな部屋で、オレと善矢は呆然と向かい合う。
窓からの風。
虚しくなるほどに爽やか。
「……っクク、プハハっ…。オレばかみたいだろ?何やってもいつもこんな感じ。なんか笑えるわー」
「圭吾……」
悲しさや虚しさも、極限を超えるとおかしく思えるらしい。
オレは自分の境遇が妙に笑えてきて、腹を抱えてひたすら笑い続けた。
どんなことも、前を目指して必死になれば
いつかは上手く行くんじゃないかって、オレにだってなんとかできるんじゃないかって
そう思い始めてたけど、すべてがそういうわけでもなくて。
「はーーっ、あ〜ぁ…。いい加減諦めろってことなのかな。オレしつこすぎたのかも」
「…そんなことない」
「神様だよ。……野崎が前に言ってた。こういうのは全部、神様が決めてるんだって」
「なに言ってるんだって…」
「外れてたんだ、最初から。オレたちが進もうとしてた道は」
「そういうこと言うなって!」
勝手に道を外すから、上手くいかせてもらえないんだ。
それを無理に、
繋げていこうなんて…