恋するキオク



ずっと一人で、周りのことなんてどうでも良くて。

自分が生きることだけで、精一杯だった。

自分の存在を、証明することで必死だった。



そんなオレが、自分を犠牲にしたって構わないと思えるくらい、大事なやつに出逢ったんだ。

それなのに。



その相手に……
守ってやりたいと思ってた野崎に

何もしてやれないことが、どれだけ悔しいことなのかなんて、他の奴らにわかるわけがない。



「お前らに、何がわかるんだよ…」



理解なんて
できるわけがないんだよ。





「……茜」


「…?」



善矢の言葉と視線に反応して、オレは後ろの扉を振り返った。

するとそこには、茜が立ってて。



何も言わずに、ただ険しい顔をして茜は真っすぐオレの前に歩いてくる。



「なんだよ、あか…っ」



……!



「……っ痛、何すんだよ!」


「なにやってんだよ圭吾!」



茜はいきなりオレに平手打ちをくらわせたと思ったら、そのまま勢いよく怒鳴り散らした。

オレは一瞬、ひるむように黙り込んだ。



「圭吾がこんなんでどうすんだよ。本当に不安なのはあの子なのに……、圭吾がこんなんなっててどうすんだよ!」


「…………」



茜は、泣きながらオレに何かを訴えてくる。

でもオレには、茜がオレにどうしろって言ってんのかがわからなくて



「じゃあお前らは……お前らはあいつに子供下ろさせろって言ってんのかよ。それで何とかなると思ってんのかよ!」


「違うだろ!」




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