恋するキオク
永遠の記憶
「圭吾!」
会場だったアクトHOUSEが近づくと、向こう側からは茜が走ってくるのが見えた。
予定してた時刻が過ぎて、僅かだった時間がもっと短くなってることもわかってたけど
それよりオレは
やっぱり野崎のことが心配で。
「…っ、ハァ…野崎は…?」
「はぁ?まだ来てねーよ。ってか何だよその傷!それに、圭吾があの子のこと連れて来るんだと思ってたじゃん」
ハァ……、ハァ……っ
野崎……
迷うに決まってるよな、悩むに決まってるよな。
重い現実ばっかりで、普通に来れるわけなんて無いよな。
そんなこと…
最初からわかってたのに。
「ちょっと行ってくる…」
「は…お、おいっ!行くってどこ行くんだよ!圭吾!」
オレはまた、
今来た道を走り始めた。
抜き去る群青色の景色の中で、頭に浮かんでくる光景はたくさんある。
オレと野崎が共に過ごした時間は、多くを語れるほどでもないけど
そういうのって長さじゃないし、残った記憶の量だって、オレたちには関係なかった。
見ていたいから、視線を注いで
感じたいから、また一歩近づいて
心が求めるから
いつまでも惹かれ続けたんだ。
運命で繋がっていたなんて、証明されなくてもいい。
目の前に見えた出来事が、たとえば全部奇跡なんだと言われたら
それを信じられる気持ちを、お互いが持っていられればいいだけのことで。
そう思い合える相手の、すべてを受け止められたなら
それだけで、
最高なことなんだ。