恋するキオク
高校入学と同時に、私は吹奏楽部に入部した。
そこで一緒に活動していた、ひとつ先輩の省吾と付き合うようになったのは一年の夏を過ぎた頃。
みんなのまとめ役で成績も優秀、誰からも慕われていた省吾に告白された私は、初めての恋愛に毎日がドキドキだった。
「省吾、早く早く!」
「陽奈ぁ、早すぎだろ」
繰り返すデート、帰り道に繋ぐ手。
省吾の存在は学校でも目立ってたし、省吾のお祖父さんは私たちの通う高校の理事長をしていたから
私なんかが一緒にいていいのかも、ずっと不安だったけど
省吾は戸惑う私にいつも優しくて。
「なに?省吾」
「陽奈は可愛いな」
そう笑いながら、柔らかい腕で私を包んでくれる。
黒髪の優等生。
大好きで、何ひとつ不満なんてなかった。