恋するキオク
突然立ち上がった圭吾が、その茜とかいう子の肩を引き止めた。
助けてくれた?
そう思ったけど、そういうわけでもなかったみたい。
「そろそろ行こうぜ、時間もったいないし」
圭吾くん…
その場から一歩も私の方へは近づかないで、圭吾は仲間と一緒に公園の向こうの方へ歩いていった。
きっと、関わるのも面倒だって思われたんだろうな。
私みたいなお節介な子
話すのも疲れるって……
また静かになった公園。
消えそうで消えない点滅を繰り返す外灯の下で、私はただ呆然と立ち尽くしていた。
省吾の笑顔が見れなくて、すごくすごく悲しくて。
でも圭吾が仲間と笑ってる様子を見たら、ホッとするように少し安心して。
私、何やってるんだろう。
もう、なんだかよくわかんないよ。
小さく一歩足を進める。
家に帰る道のりが、なんとなく遠い。
ガサっ
えっ……!?
そのとき、突然後ろの草陰から人の気配がした。
何…
びくびくしながら、私はゆっくりと後ろを振り返る。
すると輝き始めた月明かりに、シルバーのピアスが光った。
「まだいたんだ、こんなとこ。さっさと帰ったほうがいいんじゃない。この辺は静かで居やすいとこだけど、安全だとも言えないし」
「…圭吾くん」
もしかして、私のために戻って来てくれたの?
それともまた、構うなって怒られるのかな……