恋するキオク
孤独な場所
―――圭吾side―――
「どこ行くんだよ、圭吾!」
茜が後ろから腕をつかむ。
オレは足を止めてみんなを振り返った。
「後で合流するよ。すぐ戻る」
「ちょっ…圭吾っ!もしかしてさっき公園にいたあの子のとこ行くのか?知り合いなのか?」
そう迫り寄ってくる茜。
オレはその言葉に動揺し、わずかながら言葉に詰まった。
知り合い……
そういうわけでもない。
「圭吾が放っておけって言ったんだろ、行くことないじゃん!誰だよあの子っ!」
「……」
揺さぶられる体。
小さくため息をついた後、オレは見下ろした場所にある茜の額を指で跳ねた。
静かな夜と空気が、月明かりに照らされ始める。
「……省吾の女だよ」
茜は大人しく腕を離した。
一歩一歩が足に響く。
戻って来た公園は、耳鳴りがするほどに静かだった。そして外灯の下にたたずむひとつの影。
やっぱりまだいる……
たしかに放っておけば良かったのかもしれない。
意味もないのに、自分から構う必要なんてなかったんだ。
そう
こんな想いに……悩むくらいなら。