恋するキオク
オレは入部をあきらめて、同時に自分を変えることに決めた。
中途半端じゃ意味がない。
絶対似てると思われないくらい、変わらなければいけなかったんだ。
そして出逢ってしまったアイツ。
「うわっ!」
「きゃっ!…びっくりしたぁ。ごめんね、大丈夫?もぉ〜、春乃!」
省吾に見つかる前に消えようと思った音楽室から、女の子が飛び出して来た。
名前は知らないけど、同じ一年生でフルートを抱えてる。
「こっちこそ…ごめん」
そう言い返した時には、もうずいぶん向こうの方へ走って行ってたけど
オレの中には、妙な感覚が取り残されてて。
吹奏楽部の子か……
細い髪が肩の辺りで揺れる。
眉を下げてオレを心配したかと思ったら、すぐに笑顔に戻って友達とはしゃいで。
元気と言うか、単純と言うか。
もう行っちゃったし…
そんなアイツの様子に、なんか変にドキドキしてたんだ。
「ねぇ、どうする?見学してく?」
「いや、えっと…」
さっきのアイツが、何組なのかが気になって。
同じ学校なんだからいつでも会えるとは思うのに、今すぐもう一度見ておきたくて。
「いいです、また考えます」
声をかけてくれた3年生に頭を下げて、オレはアイツの走っていった方へと向かった。
どっちに行ったんだろ……