恋するキオク
人が変わるきっかけなんて単純なものだ。
どうしてあの時がそうだったかなんて、今もよくわからない。
アイツが引き金になったとも別に思ってない。
ただタイミング的にそうだったんだと思う。
省吾のためにいろんなことを我慢する、そんな毎日がバカらしく思えた。
「それは賛成できないね、圭吾」
祖父ちゃんがオレの退学届なんて受け取らないのは分かってたけど、それでももう学校に来る気はなかった。
家にいればどうしたんだ、どうして行かないんだと心配される。
理由を話すことも面倒だ。
いや、話す必要もなかったし、考えてみたら特別理由としてあげるものもなかった。
省吾の近くにいたくない、それだけだった。
それからは、朝も夜も抜け殻状態。
街で知り合った他校の奴らとも合う気がしない。
そんな時に、
オレは今の仲間と出会った。
「ねぇ、あんた何してんの?うちらと一緒に音楽やらない?」
顔には出さなかったけど、ちょっと興味があった。
オレはその日のうちに練習場として使ってるらしい空き家について行って、一緒に演奏を楽しんだ。
そしてその時、初めて正面から認めてもらえることの心地よさを知ったんだ。
「すっごい上手いじゃん!今すぐ仲間に入りなよ!」