恋するキオク
どうせなら、強く怒鳴ってくれた方が良かったのに。
星空の下で繋ぐ省吾の手は、いつもより力強くて、優しかった。
「思ったよりやることが多くてさ。本当はもう少し部活にも顔出せる予定だったのに、全然時間取れないし」
「うん、大変そうだよね」
自分のしたことが、悪いことだとは思ってない。
省吾が言ってたように、何か特別に圭吾を構うとか、そういうつもりだったわけじゃないし。
ただ、誰でもするような話しをしていただけだし。
でも、なんだか気持ちがおかしくなってて。
「陽奈はクラスの出し物も、部活の練習も頑張ってるんだろ?」
「もちろんだよ。省吾もいろいろ頑張ってるんだもん。私だってちゃんとしないと」
「そっか。えらい偉い!」
髪に触れる省吾の指先。
今まではドキドキできたことに、変に切なさが込み上げた。
私、どうしちゃったのかな…
「でもホント嬉しいな、陽奈がオレのためにこれ買いに行ってくれたこと」
見下ろして微笑む省吾に、私も笑顔を返す。
だからって、やっぱりこんなの変だよ。
「省吾…、圭吾のこと聞かないの?」
だって、絶対気になるに決まってるから。
通りの木々が風に揺れてざわめきを立てる。
省吾は足を止めて、私を自分の正面に立たせた。
「陽奈と圭吾は同じクラスだろ?だからずっと話さないままでいるなんて無理な話。変に縛り付けるのもおかしいって、オレ考え直したから」
「省吾……」
ほら、この目がよく似てるの。
「オレは、陽奈を信じてるよ」
誰から聞いたっけ。
恋人同士は、ケンカしたり気まずくなったりするたびに仲直りをして
それを繰り返すほどに、距離を縮めて行くって。
私と省吾は、前より近づいたの?