恋するキオク
屋上を駆け抜ける風は、涙で火照った顔を次第に冷ましていった。
ここ数日は、胸の中で沸き上がる切なさをなだめなければいけないことばかりで。
本当は、圭吾の顔を見ることも…
「それはクラスの奴らも呆れるな」
「だって……、圭吾くんもこの話知ってるんでしょ?私は知らなかったんだけど、牧野さんが有名な話だって言ってたもん」
「まぁ、一応……ね」
「だったら、だったらわかるでしょぉ〜…うぅ…、ユリアだってカイのとこに居たいんだよ〜うぁ〜っ…」
「おい、またかよ……」
もう、なんだか涙が止まんなくなったじゃん。
こうして話してると、よく分かんないけど圭吾がカイのように思えてきて。
全然立場とか関係ないし、別に圭吾がそんな想いしてるわけでもないのに、ユリアの代わりに本当は好きなんだって伝えたくなるっていうか。
本当にわけわかんなくなってるんだ、感情移入し過ぎちゃって。
圭吾も呆れて空を見上げてばかりだし……。
「ごめん……圭吾くんの前だと泣いてばっかりだ。ふぅ〜っ、もう落ち着くから。でも…圭吾くんどうしてここにいるの?」
首を傾けながら見上げる私に、ん?と下を見る圭吾。
「あぁ、いつも学校休んでるわけじゃないから。それに時々出ないとうるさい奴もいるし。……あと」
そこまで言うと、圭吾は私と同じ高さまで降りてきた。
そして見上げる私を眺めながらフッと笑う。
「まだまつげにいっぱい涙付いてるぞ」
「えっ、もう〜!あと何!?」
なんだか最近、少し縮まって来たように感じる圭吾との距離。
膨れる私に一歩近づいて、圭吾は風に吹かれた私の前髪を指先で持ち上げた。
思わずドキッとして、私はまた固まってしまう。