恋するキオク
「あ、省吾さんだっけ?」
茜さんがそう言いながら圭吾を見上げた。
さっきまで、私がいた場所で。
「へぇ、圭吾の友達?オレのこと知ってるんだ」
「うん、たまに見かけてたし圭吾から話聞いたこともあるから。その子彼女だろ?」
「そんなことまで知ってるの?なんかどこまで聞いてるのか気になるなぁ、ははっ」
省吾と茜さんの会話の間で、私と圭吾はずっと下を向いてた。
なんなんだろう、この雰囲気。
「もしかして圭吾が家に帰らない時って、君らと一緒にいるのかな」
「まぁね…、うちに泊まったりしてるよ」
ドクンッ……
少し照れたように話す茜さんの言葉に、私は思わず顔を上げた。
「圭吾にもそういう相手いたのか、それは知らなかったな。ね、陽奈」
私の様子をうかがうように、省吾が後ろを振り返る。
ただ何度も頷くだけの私。
「そっかぁ、ちょっと安心したよ。これからも圭吾のことよろしく。じゃあ、そろそろ行こうか、陽奈」
省吾は茜さんたちに手を上げて挨拶をする。
私もその後に、軽く頭を下げた。
圭吾は……
ずっと空だけを見てた。