恋するキオク
対照的な二人
チューニングの音が、遠く校舎内に響き渡る。
音楽室に集まった各パートのメンバーは、半円を描くように椅子を並べて座っていた。
指揮台に立つ省吾の合図を確認しながら、ひとつひとつの音を丁寧に出していく。
そしてそんなときに、こっそり後ろから耳打ちしてきたのは友達の春乃。
「ねぇねぇ陽奈。省吾先輩って素敵よね〜。三年になって部長になるのはわかってたけど、それに加えて今期生徒会長。おまけにルックスまで最高なんだから。あんな人の彼女だなんて、ホント幸せ者よねぇあんたは」
クラスは違ったけど入部以来ずっと仲が良くて。私はフルート、春乃はクラリネットを担当していた。
「おい、そこ。ちゃんと合わせて音出して」
「うわっ、見つかった!」
省吾の言葉で慌てて音を出す。春乃はいつもこんな調子。
私がクスクス笑うと、それを見た省吾もちらっと笑顔を見せた。
そんな仕草にまで、くすぐったいようなドキドキが込み上げてくる。
それから顧問の先生が音楽室にやってくると、省吾はみんなの音の状態を先生に伝えて、自分は打楽器の位置へと戻って行った。
ブレザーの襟を正しながら、すっと背筋を伸ばしてバチを構える。
まっすぐな視線。
お祖父さんのせいもあるから、注目されやすい立場ではあったと思うけど
省吾は本当に
誰から見ても優等生だった。