恋するキオク



並んで歩くことにもずいぶん慣れた帰り道。

私と省吾は手を繋ぎ、本屋さんに寄って帰ろうと商店街を歩いていた。

最初の頃は顔を見上げることすら緊張してできなかったのに、今はこうして堂々と寄り添うこともできる。



緩いカーブのかかった髪がふんわりと揺れると、その間からは優しく微笑む瞳が見えた。




「へぇ、圭吾は陽奈と同じクラスになってたのか。って言っても、ほとんど学校には来てないから、クラスメイトってほどでもないだろ」


「うん、一度も会ったことないよ」


「えっ。アイツまだ一回も来てないの?しょうがない奴だなぁ。……でもまぁ、その方がいいかもな」


「…ん?どうして?」


「だって陽奈のこと圭吾に取られたら困るし」


「なにそれ〜。そんなわけないよぉ。会ったこともないのに」



軽く切り返す私。

本当は、ちょっと前までは省吾の弟が同じ学校にいることさえ知らなかった。

省吾は全くと言っていいほど、圭吾の話なんてしなかったし。

そんな様子に、なんとなく聞きにくい雰囲気もあったから……。



「私は省吾がすっごい好きだもん。だから関係ないよ〜」


「うん……でも」


「…え?」





笑いながら前を行く私の手を取り、急に真剣な表情になる省吾。

そしてそのまま、省吾は私を自分の近くへと引き寄せた。



「わかってるけど…ちょっと心配」


「……省吾?」





人目を避けて、そっとキスをする。

伝わる鼓動が唇を揺らした。





初めての恋愛がそう感じさせたのかもしれないけど、私はずっと、省吾のことしか考えられないと思っていた。

省吾以外の人に惹かれることなんか、絶対ないって……



ずっと、そう思っていたんだ。






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