恋するキオク
「オレもずっと弱かった」
「圭吾……」
「でも、もう変われる。
この先の運命だってオレ自身のことだって。きっと…変えてみせるよ」
圭吾の髪の隙間から入り込んでくるライトが眩しくて。
私は顔を下に向けながら何度も頷いた。
圭吾が好きで、
ずっと一緒にいたくて。
例えばそれが、誰かを傷付けることになったとしても。
もう誰にも止められないから。
「圭吾…、本当に好きだよ」
「わかってる」
振り返りざまに重なる視線。
圭吾がいてくれるなら、私もきっと乗り越えられる。
この先に続く道が、どんなに辛い道でも。
圭吾の作った音楽に乗せられながら、切なくも深く繋がった恋を演じる。
圭吾のセリフは、とても一晩で覚えたとは思えないほどになめらかで。
まるであの庭がここに広がるかのように、私は自然にユリアを振舞うことができた。
そして
誰もが聞き惚れたに違いない。
その曲にも、声にも。
「いつでもここにおいで。僕はずっと待ってるから」
それぞれに歩むことになる別の道。
それでも心の片隅ではずっと繋がってる。
圭吾はどのセリフも完璧にこなした。
でも舞台の途中に、どうしても最後のセリフだけは変えたいんだとみんなに申し出たんだ。
どうせ今回は一幕までしかやらない。
それなら何も、悲しい終わり方で幕を閉じる必要はないんじゃないか。
「さよなら」はやめよう。
どうせなら、この先の道に期待を込められるような終わり方に。
私はこの時のセリフを忘れない。
ううん、忘れられなかったんだ。
ずっと…
「僕は必ず、君を迎えに行くよ」