むすびても 又むすびても


先生が幕府の奴らに殺されて、僕の世界から光が消えた。


優しかった先生、この国の今を憂い正そうとしていた先生、僕らに知識と言う力をくれた先生。


──憎い、辛い、苦しい。


醜い感情に押し流され、けれど何も出来ず、僕はただ嘆いていたばかりだった。


そんな深い闇から掬い上げてくれたのが、君。


君がいたから今の僕がある。


君がいるから、この日ノ本を僕の手で変えてやろうと思えたんだ。


神などいない。腐った幕府ももう要らない。
長過ぎる統治に胡座を掻く大樹公(征夷大将軍の異称)などさっさとその座から下りるべきだ。


全ては君の──僕たちの未来の為に。


勝手なのは承知してる。


でも時代は今確実に動こうとしている。なら僕は、それに賭けてみたい。





しとしとと降る雨の飛沫が沢山の小さな粒となって、君の髪を濡らしていた。


いつか僕があげた青い硝子のついた簪が艶やかな黒髪に鮮やかで、つい場違いな笑みを浮かべてしまった。


大丈夫。


不思議と穏やかな気持ちで僕はもう一度、さっきの言葉を口にした。
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