氷狼ーこんな世界でもきっとー
序章-昔の夢-
少年「う・・・・ぇぇう・・・・」

暗い、暗い洞窟の奥深く、1匹の少年の鳴き声が聞こえる。
頬から流れる雫は氷となって地面に散らばり、いつしか土に溶けていく。
体は恐怖でふるえ、うまく言葉がはっせない

少年「父・・さん・・・母・・さん・・・みん・・な・・」

声は誰にも届かない。孤独だということを自覚させているように
洞窟は声を跳ね返す。

少年「誰・・・か・・・・」

外では人間とパーコズリュコス一族が闘ってる。一度は勝った
パーコズリュコスだが結界の中に入ってきた人間たちのほうが、
いや人間を率いる化け物たちのほうが一枚上だった。一族の中で
一番強いオサでさえ苦戦しているほどだ。

(死ぬの?死んじゃうの?みんな、みんな・・・)

最悪の状況を想像して少年は更に震え上がった。そして叫ぶ

少年「嫌だ・・・・そんなのイヤだ!!」

その言葉が合図のように少年を冷たい氷が優しく包んだ。
次の瞬間氷から出てきたのは少年ではない、狼だった。
そのまま勢いよく駆け出し、洞窟の中から外のにおいを頼りに走っていく。
数分後目の前に僅かな光が見えてきた。

"出口だ!"
喜ぶ少年を待っていたのは-絶望-
血まみれの両親、血まみれの男、そして狼の死体を食らう人間たち。
あまりの光景に狼の変幻が解けて少年の姿へと戻った。

少年「う、うあああああああああああ!」

男「ギャハハハハハハハハハハハハ!」

外には少年の叫び声と男の笑い声が響いた。

男「××××××××」

次の瞬間、頭に聞こえた言葉を最後に少年の意識が消えた。
     
      -君が最後の希望者ー

夢はそこで終わった。窓を開けると朝陽が部屋を照らした。
鳥のさえずりが聴こえた。今日も〈嘘の平和〉が訪れた。

(なぜ今になってあの夢を・・・・嫌な予感がする・・・・)

その予感が近い将来、訪れることを少年はまだ知らなかった_
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