氷狼ーこんな世界でもきっとー
二章ー日常ー
それは日常だった。いつもの下駄箱、廊下、教室。そしていつもの
       〈静寂〉
もう何回目かもわからないこの静寂は俺と甘和を容赦なく
突き刺す。そしていつもの陰口。

女子1「ねえ、天音と大神って付き合ってんでしょ?」

女子2「うん、なんか同居してるって噂もあるよ。」

女子3「何それ。高校生なのにありえない!」

女子1.2『声がでかい!』

ヒソヒソ言ってるつもりだろうか。それともわざと聞こえるように
言ってるのだろうか。全部耳に一字一句正確に入ってくる。まあ、
それも当たり前か。氷狼の目、耳、鼻、足、そのほかもろもろ
人間とは違いすぎる。半狼の俺は運が良いのか悪いのか一族の
全てを受け継いだ。人間としての外見だけが唯一人として受け継いだものだった。
別にリュコス一族と人間の間に生まれたことに後悔はない。恨むこともない。
でも、こういうときは少し不便だ。と思う。

女子4「ねえねえ天音~wあんた大神と付き合ってるって本当~?
    よくあんなのと付き合えるよね~w私だったら友達でも無理だわ~w」

女子5「アハハキッツ~」 女子6「可哀想だよ~」

女子4「え~本当のことじゃ~ん」

女子6「アハハ確かに!」

(こいつら・・・・)

甘和を囲んで、寄ってたかって言い放題。
とにかく甘和がキレる前に止めないと。

氷河「オイお前ら・・・・

甘和「・・・・ん吠える犬だなぁ・・・・」

女子4「・・・・はっ?」

甘和「聞こえなかった?ぎゃんぎゃん吠える犬って言ったんだよ。
   本当に人間って耳悪いね。」

(・・・・あ。しまった。)

そう想ってももう遅かった。1人の女子が顔を赤くして叫ぶ

女子5「ふ・・・ふざけんな!!お前のほうが犬だろうが!」

甘和「・・・・あ?」

女子6「いつもいつも大神と一緒で・・・後ろを付きまとってるお前のほうが犬だろうが!
    知ってんだよ!お前いつも大神に誰とも喋るなって言われてんだろ!?
    そんなのを忠実に守ってるなんて。ばっかじゃねえの?!w」

甘和「・・・だったら何だよ。お前に関係あることか?」

女子6「は?目障りなん・・・・

相手の罵倒が飛び交う中で3人の女子の首元を一気にグイッと掴んだ。

(ああ・・・・なんか凄い。首元って3人分掴めるんだ)

素直に感心してしまった。いや、してる場合じゃないけど

甘和「お前の都合なんか知るか。そんなに目障りならお前らがどっかいきやがれ
   だいたい・・人の悪口しか言えないような奴らが偉そうにすんじゃねえよ。
   あと氷牙に謝れ。」

男子1「なんだなんだぁ?」

男子2「喧嘩だってよぉ」

男子3「えっ!どこどこ!」

(・・・・そろそろ止めないとマズいな。)

声が大きい為かクラスの周りには人だかりが出来ていた
これ以上大きくなるとまたクラスに居づらくなってしまう
暫くみていたが仕方なく仲裁しにいった。

氷河「甘和、それくらいにしろ」

甘和「氷牙でも・・・・でもこいつら・・・・!」

氷河「いいから、俺のことは。行くぞ」

甘和「・・・・うん、分かった」

こいつらに謝罪されたとこでどうもしない。それにそんな暇があるなら
教室の外に出ていたい。そんな気持ちだった。いやそれしかなかった。

女子4「っ・・・・調子乗んなよ!」

(負け惜しみかよ)

というか負け惜しみにしては随分身勝手な言い方だなぁおい

甘和「あっ。待って氷牙。」

氷河「ん?」

「最後にこれだけ」といって後ろを振り返り、甘和は笑顔でこういった。

甘和「you all suck (糞野郎が)」

氷河「・・・・はっ。アイツらのための言葉だな」

甘和「でしょ?」

そうして俺達は汚い教室を出て行った。
教室は謎の静寂に包まれたままで_
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