Ri.Night Ⅰ 【全完結】
「言ってくれたら良かったのに……」
「凛音ちゃんを怖がらせたくなかったから」
「……壱さん」
優しすぎるよ。
こんな風に中田に狙われる事になったのは全部あたしのせいなのに。
「壱、分かってねぇな。コイツに言ったら“あたしも行く!”って言って暴れるだろうが」
「はぁ!?あたしそんな事しないし!」
ね、壱さん、とバックミラー越しに問いかければ、無言のキラキラスマイルが返ってきた。
壱さんまで……!!
「ホラな。みんな思ってんだって」
ヘッと馬鹿にするように笑った煌にイラッとして、後ろから耳を引っ張ってやる。
「……テメェ、後で覚えてろよ」
「知りませーん」
フイッと顔を逸らしてシートに背中を預ける。
っていうか、朝から疲れたんですけど。
慣れない車登校に馬鹿煌の相手。
もう朝からヘトヘトだよ。
これが毎日続くなんて……。
あぁ、耐えられそうにない。
コテン、と首を傾ければ、視界に入ったのは総長様のお顔で。
その彫刻のように整った顔を見た瞬間、あたしの中の何かがプツンと切れた。
「起きろこの野郎ー!!」