Ri.Night Ⅰ 【全完結】


っていうか、十夜は仮にも鳳皇の総長様なんだけど、その総長様に腕を引っ張って貰っても良いのだろうか。


あっ、でも、初めて来た時抱っこして貰ってるし、手ぐらいなんともないか。


いや、でもなぁ……。



十夜の目の前で真剣に悩んでいると、十夜がスッとあたしの前に左手を差し出してきた。



えーと、これって右手を出せって事だよね?



恐る恐る右手を上げると……。



「………っ」



十夜が握ったのは、あたしの手首ではなく手のひらで。



つまりは、十夜と手を繋いでいるということ。




「……っ、あ、」

「………」




それを理解した途端、あたしは十夜の手を思いっきり払って引っ込めてしまった。




「………」

「………」




二人の間に流れる気まずい空気。




「あ、あの、とお──」


「先に行け」


「え?」



十夜は一言そう言うと、階段を下り、あたしの後ろへと回った。


そして、早く行くようトンッと軽く背中を押してくる。

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