Ri.Night Ⅰ 【全完結】
………あっ。
「いてっ!」
抓ってた頬が自然と離れ、その反動でソファーに叩き付けられる煌の後頭部。
けど、今のあたしにはそんなもの気にも留めてなくて。
あたしの意識は、お風呂場から出てきた十夜へと向けられていた。
「………」
「………」
無言のまま見つめ合うあたしと十夜。
「凛音!お前離すなら離すって言えよ!」
「えっ?あっ、ごめんごめん」
煌の怒声にハッと我に返り視線を戻す。
すると、右の頬を摩りながらあたしを睨んでいる煌と目が合って、アハハと愛想笑いして誤魔化した。
「………」
……見られてる。
スッゴい見られてる。ガン見されてる。
っていうか、見るぐらいなら何か喋って欲しいんですけど!
無言に加え、そこから全く動こうとしない十夜にだんだん気まずくなってきて。
「煌、もういいでしょ?重たいんだけど」
この空気から逃げ出そうと、膝の上にいる煌を無理矢理押し退けた。
「んだよ。ケチケチすんなよ」
だけどそれは失敗に終わり。
「ケチケチしてないでしょ!」
「じゃあもうちょっとー」
はぁ!?ちょ、空気読んでよ!
わざと頭に力を入れ、無理矢理その場に留まろうとする煌に殺意が芽生える。
コ、コイツ!!
膝蹴り食らわしてやろうか!