Ri.Night Ⅰ 【全完結】
足に力を入れようとした、その時。
「ただいまー!」
タイミング良く陽が帰ってきた。
「あ、おかえりー!」
「おわっ!」
油断した煌の身体を思いっきりひっくり返して、何事も無かったかのように手を振る。
派手に落ちたけど、そんなのあたしの知ったこっちゃない。
「煌、何してんだ?」
「……何もしてねぇよ」
カーペットに仰向けで転がってる煌を見て、首を傾げる陽と彼方。
「あれ?壱さんは?」
「下に居る」
「そっか」
陽達が帰ってきて一気に明るくなったリビング内。
不穏な空気を作り出していた元凶の十夜はと言うと、いつの間にかリビングから居なくなっていた。
寝室の扉が少し開いている所を見ると、着替えにでも行ってるのだろう。
それから、少しの間みんなで談笑して、彼方と陽は呼び出しが掛かり再び傘下の元へ。
その後、壱さんと煌はよく分かんないけど繁華街へと出て行った。
残ったのはあたしと十夜二人だけ。
なんでこんな気まずい時に何度も二人きりになるんだろう。
再び訪れた気まずい空気に居た堪れなくなってきて、正直しんどい。
「凛音、送る」
「え?あ、うん」
そんなあたしの気持ち気付いたかのように声を掛けてきた十夜が、バイクの鍵を手に持って先に玄関へと歩いていく。