Ri.Night Ⅰ 【全完結】
「ほーんと、煌って超面倒見いいよねー。ママみたい」
「オイ、誰がママだ」
「いたっ」
持ってたドライヤーでコツンと小突かれ、ムッと唇を尖らせながら肩越しに振り向けば、煌もは不満げな顔であたしを見下ろしていた。
「ホントの事じゃん!」
「せめてそこはパパにしろ」
「えっ、そこ?」
「俺は男だ」
いやいやいや煌さん、そんな真顔で言われても。
ツッコミ所満載な煌にみんなが大爆笑した時、ガチャと開いた寝室のドア。
ちょうどドアの方へと視線を向けていたあたしは、バッチリ十夜と目が合ってしまった。
「お前遅いぞ!早く起きて来いよ!」
「十夜はよ!」
「十夜おはよう」
「うーす!」
皆が口々に十夜に挨拶するけど、十夜からの返事はない。
そんな十夜に慣れているのか、挨拶が終わるとすぐ四人で別の話をし始めた。
だけど、あたしはその間ずっと十夜と目が合ったまま。
どうしたんだろう?
一向に動こうとしない十夜にコテンと首を傾げる。
「十夜、どうしたの?」
「……別に」
表情を変える事もなくそう言った十夜は、スッと目を逸らしてお風呂場へと消えていった。