Ri.Night Ⅰ 【全完結】
「……じゃあ、あたしはこれで」
突き刺さるような視線に耐えられなくなり、軽く頭を下げて踵を返した。
「───オイ」
数歩歩みを進めた時、背後から声を掛けられてゆっくりと振り返る。
交えたのは、さっきと変わらない真っ直ぐな瞳。
「俺達はいい。けど、陽とは友達でいてやってくれ」
「……十夜?」
そんな事を言われるとは思っていなかったのか、陽が大きく目を見開かせる。
「………」
……そういう事、ね。
真っ直ぐ見据えるその瞳にあたしは納得した。
この人は見た目と違って情の厚い人なんだろう。
あたしと陽が親しいのを知り、陽の事を想ってそう言ったんだ。
「ふふっ」
思わず零れる笑み。
それを見た失礼男は馬鹿にされたのとでも思ったのか、眉を潜めた。
「あ、ごめんね。馬鹿にしたとかじゃないから。ただ、優しいなぁと思っただけ。
心配しないで。あたし、陽と友達やめる気ないから。じゃ、陽きゅんまた明日!」
「へ?あぁ、うん、また明日!……って、陽きゅんって言うなって言ってんだろ!」
「あはははは!バイバーイ!」
憤慨する陽に笑顔でバイバイと手を振った後、あたしは振り返る事なく屋上を後にした。