プラネタリウム

「喋れない？」
一瞬、訳がわからなかったが、
すぐに理解した。声が出ない。つまりそう言う事だ。
「あー...ごめん。迷惑だったか。」
そのまま立ち去っても良かったが、
それではあまりにも無責任だ。
もっとも、この少年を傷つけることになる。次に何をすればいいか迷っていると、少年はまた、文字を書く。
普通なら書いている間は長く感じ、テンポが悪いだろうが、俺には好都合だ。書いている間に思考を落ち着けられる。そんなことを考えている間にも、もう書き終わったようだった。
『いいよ。話しかけてくれてありがとう。』

ありがとう。 その言葉に疑問が浮かんだ。
「え？」
俺は只、暇つぶしに話しかけただけで。
話すことが嬉しいのか？
『いつも一人だから』
淋しそうに笑った顔が、目に焼き付いた。それは本当に、心からの感情で。
「俺はなんもしてないよ。」
本当にそうだ。何もしてない。
俺の心に、いつも一人、と言う言葉が刺さった。
「ねえ、いつもここにいるの？」
会話を続けようと、
俺は言った。それでも、少年は嬉しそうに笑っていた。