夢みる王子さま


伸びきったボサボサの髪に瓶底メガネというダサい出で立ち。

16歳にしては細すぎる身体に、より貧相にみせる猫背な背中。

リア充とは縁のなさそうなコイツは"時瀬 歩夢(トキセ アユム)"。



物心ついた時から、ずっと一緒だった。

比較的大きな住宅街にして、ココらへんの子供は私と歩夢だけという残念なご近所事情。

一緒にいるしかなかったのだ。

大人しくいつも静かな歩夢は害にも邪魔にもならなくて、16年間ぶつかりもなく仲良くやってきている。

もう少し見た目がどうにかなって頼りがいがあったら望みはあったかもしれないのだけれど。

大好きな幼なじみというには程遠い。


「つみきちゃん…ノド乾いた。」


「自分で取って来い。」


つみきちゃんというのは私の事だ。
"浅野つみき(アサノ)"という。
つみきという名前が嫌いで浅野と呼べと言ってるのに、幼い頃からそれだけはなおらない。

いつもは従順すぎるくらいなのに、変な所で歩夢は頑固なのだ。

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